QOL尺度 (preference-based measure: PBM)

医療経済評価において、質調整生存年(quality-adjusted life year: QALY)を算出するためには、測定されたQOL値が必要です。このQOL値の測定には通常の(プロファイル型)健康関連QOL尺度ではなく、そのために開発された「選好に基づく尺度(PBMs)」を用いなければなりません。ここでは、代表的な尺度、あるいはC2Hで開発に携わった尺度などをご紹介します。
なお、分析等においてここに掲載されているものの使用を推奨しているわけではありません。

EQ-5D-3L (EuroQoL 5 dimensions 3-level)

EQ-5Dは次のEQ-5D-5Lとあわせて世界的に最も汎用されている尺度である。「移動の程度」「身の回りの管理」「ふだんの活動」「痛み╱不快感」「不安╱ふさぎ込み」の5問からなる(選択肢は3水準)。日本でも換算表が開発されている。


EQ-5D-5L (EuroQoL 5 dimensions 5-level)

EQ-5D-3Lと質問項目は同じであるが、選択肢が5水準に改良されたもの。日本でも換算表が開発されている。ただし、「移動の程度」の最も悪い水準が(英語版に対応して)「寝たきり」→「歩き回ることができない」、あるいは「身の回りの管理」の訳語が「洗面」→「身体を洗う」になるなど、健康状態を表す表現も変わっている。また同じTTO法を用いてvalue setを作成してるが、負の値の測定方法は異なっている(いわゆるcomposite TTOを5Lでは使用)。その結果として3Lでのスコアと必ずしも対応していないことに注意が必要である。


EQ-5D-Y (EuroQoL 5 dimension youth)

子どもを対象にして開発されたもの。5問の質問項目は大人版と基本的に同じであるが、子どもにもわかりやすい表現になっている。対象年齢は8歳から15歳である(12-15歳は成人版も使用可能)。


HUI (Health Utilities Index) 2/3

カナダのマクマスター大学の研究グループによって作成された尺度である。「視覚」「聴力」「会話」「歩行」「器用さ」「感情」「認知」「痛み」の8領域からなる(classification systemという)。質問票は15(あるいは40)であり、15問を8領域の回答に変換した後に、QOL値を算出する。


SF-6D (Short form 6 dimension)

イギリスのシェフィールド大学の研究グループによって開発されたもので、SF-36というプロファイル型尺度の回答からQOL値を算出するためのものである。SF-3636問を6領域の回答に変換した後に、QOL値を算出する。SF-6Dに直接回答することは推奨されていない。


15D

フィンランドヘルシンキ大学の研究者によって開発された尺度で、15問からなる。


AQoL (The Assessment of Quality of Life)

オーストラリアで開発された尺度で、8次元、35問からなる。QOL値が算出できるとともに、プロファイル型の尺度としても使用できる。


ASCOT (The Adult Social Care Outcomes Toolkit)

イギリスのケント大学で開発された。社会的ケア関連QOL(Social Care Related Quality of Life: SCRQoL)を測定するためのものである。8領域、9(4水準)からなる質問票であり、ケアを受ける本人の他に介護者(carer)QOL値を測定できるもバージョンもある。


ICECAP (ICEpop CAPability measure)

イギリスのバーミンガム大学で開発されたもので、アマルティア・センのアプローチに基づき、潜在能力(capability)を測定するとされている。成人用のICECAP-Aと高齢者用のICECAP-Oが開発されており、4水準、5問から構成されている。


EORTC QLU C-10D

(Quality of Life Utility Measure-Core 10 dimensions)

EORTC QLQ C-30という癌領域で汎用されているプロファイル型尺度から、QOL値を算出するために開発された。QLQ C-3030問を、10領域の回答に変換した後に、、QOL値を算出する。疾病特異的なPBM1つである。