費用の計算方法

費用対効果を考えるうえで、「費用」と「効果」の両面を検討することが大切だとご説明しました。それでは、それぞれの大きさは、どのように計算していくのか。まずは「費用」から考えてみましょう。

1. 費用にはどのような種類がある?

「治療にかかる費用」といっても様々なものが考えられます。

病院や診療所で医師に払う費用、薬局で薬をもらうための費用などは、誰にでもイメージしやすいでしょう。しかし、状況によっては、遠くの病院へ行くための交通費、自宅療養をする際に使う車いすやベッドの購入費、そのために自宅を改修する費用までかかるかもしれません。

あるいは、長期間入院したことで仕事ができずに収入が減ってしまえば、それは個人にとっての大きな「費用」ともいえます。これらをどこまで考慮して費用対効果を算出すべきか。学術的にも色々な考え方があります。

2. どのような費用まで考慮するか

それでは、費用対効果を考える上で含める費用の範囲が、どのように決まるのか。それは分析の「立場」に依存します。

例えば、患者さんの立場ならば、治療にかかる費用のうち、自己負担分だけが問題になります。患者さんが支払う交通費や収入の減少も、患者さんにとっては費用といえます。

一方で、国の立場に立てば、あなたが支払う自己負担分をはじめ、交通費や自宅の改修費、収入の減少も、税金からは支出されません。国が関係するのは、あくまで治療費のうち保険料や税金から支払われる部分のみです。

厚生労働省が医薬品や医療機器の費用対効果を考える際には、「公的医療の立場」で考えることになっています。かいつまんで言うと、医療費に関するものは自己負担分も、保険料や税金による負担分も、すべて含んで考えるという立場です(つまり、医療費の全額になります)。

一方で、公的医療に関係しない部分は考慮しません。あなたの交通費や収入の減少は含まれないわけです。それは、個人にとっての費用を重要視していないということではありません。医薬品や医療機器について、公的医療における費用対効果を検討したい、ということが評価の目的だからです。

3. 将来に発生する医療費も考える

ここまで述べたように、医薬品や医療機器の費用対効果を考える際には、公的な医療費のみ考慮します。ただ、それは現時点での医療費だけではありません。

例えば、ある患者さんが糖尿病の治療によって血糖値をうまくコントロールできるようになったとします。現時点では治療費がかかる一方ですが、将来においては心臓や脳、腎臓、目など、様々な合併症を予防することにもつながります。腎臓の病気になって人工透析を受けるようになると大きな医療費がかかりますから、それらを予防できることは医療費の点でも意義のあることです。

そこで、費用対効果においては、病気によって将来的に発生するかもしれない医療費、あるいは治療によって予防できる医療費もあわせて評価しています。医療費を短期的な費用だけで考えることは、治療の評価としては十分ではないためです。

ただし、「将来」といっても、何年あるいは何十年も先におこる病気の予防によって削減できる医療費です。現時点ではそれが実際にどのくらいになるのかは、わからない部分もあります。そのため、様々なモデルを用いて将来的な医療費を推計していきます。その結果、削減できたり、余分にかかったりする費用を予測し、費用対効果を計算していくのです。