1. そもそも「費用対効果」とは?
費用対効果は日常的にもよく使われる用語です。ここで、その意味を改めて考えてみましょう。
治療を行うためにかかる「費用」と、得られる「効果」のバランスが、費用対効果を考える上では重要です。
「安物買いの銭失い」ということわざもありますが、安価でも効かない薬や質の悪い医療では困ってしまいます。逆に、効果が高かったとしても、あまりに高額な治療では、公的医療費として手が届かないようなものになるかもしれません。大切なのは、あくまで「費用」と「効果」のバランスが取れていること。英語では”value for money”、つまり「価格に見合った価値」が提供されているともいいます。
2. 費用対効果は比較が重要
もう一つ、医療における費用対効果を考える上で重要なことがあります。費用対効果は、他の医薬品や医療機器と比較して初めてわかるということです。
たとえば、「特急電車に乗ると早く着く」のは、各駅停車の乗車時間と比べるから「早い」とわかるわけです。この世に特急電車しかなければ、それが早いのかどうかはわかりません。「新宿駅まで各駅停車よりも20分早く着きます」と言われるから、早さの程度が理解できるのです。
医療の費用対効果も全く同じことがいえます。この時、比較されるほうの医薬品や医療機器を「比較対照」と呼びます。比較対照がなければ、費用対効果は計算できません。あくまで他の医薬品や医療機器などとの相対的な関係性の中で、費用対効果は決まっていきます。
3. 費用対効果の計算方法
この計算式で求めているのは、新しい医薬品や医療機器を使用した際にかかる「追加の費用」を、新たに得られる「追加の効果」で割ったものです。
例えば、新たな治療により比較対照と比べて200万円余分にかかるけれども、0.5年間の延命が期待できれば、ICERは200万円/0.5年=400万円/年と計算できます。これは「追加的に1年間生きるのにあと400万円かかる」と解釈できます。つまり、ICERの値は小さければ小さいほど、費用対効果がよいということになります。
費用対効果の分析においては、ICERの値を算出することが、多くの場合において最終的なゴールです。この値を用いて、費用対効果のよしあしを検討することになります。
ちなみに、同様の取り組みは日本のみならず諸外国でも行われています。海外では、費用対効果を「医療技術評価(Health Technology Assessment; HTA)」のひとつの要素として検討している国もあります。厚生労働省では医薬品や医療機器の費用対効果を検討することを「費用対効果評価」と呼んでいます。
ここまで費用対効果の前提を見てきました。再度まとめると、
- 「費用」と「効果」のバランスを考えることが重要
- 費用対効果は比較対照と比べることでわかる
ということを踏まえたうえで、医療における費用対効果の程度を計算していきましょう。計算には、「増分費用効果比(Incremental cost-effectiveness ratio: ICER)」と呼ばれる指標を用います。計算式は、以下の通りです。
この計算式で求めているのは、新しい医薬品や医療機器を使用した際にかかる「追加の費用」を、新たに得られる「追加の効果」で割ったものです。
例えば、新たな治療により比較対照と比べて200万円余分にかかるけれども、0.5年間の延命が期待できれば、ICERは200万円/0.5年=400万円/年と計算できます。これは「追加的に1年間生きるのにあと400万円かかる」と解釈できます。つまり、ICERの値は小さければ小さいほど、費用対効果がよいということになります。
費用対効果の分析においては、ICERの値を算出することが、多くの場合において最終的なゴールです。この値を用いて、費用対効果のよしあしを検討することになります。
ちなみに、同様の取り組みは日本のみならず諸外国でも行われています。海外では、費用対効果を「医療技術評価(HTA,Health Technology Assessment)」のひとつの要素として検討している国もあります。厚生労働省では医薬品や医療機器の費用対効果を検討することを「費用対効果評価」と呼んでいます。