費用対効果評価の必要性

厚生労働省が定めた医薬品や医療機器の価格。この価格の適正さを評価するのが「費用対効果」という考え方です。よく耳にする言葉ですが、こと医療においては「費用対効果評価」と呼ばれ、国の方針として費用対効果の評価を進めていくことになっています。

1. 日本における医療費の現状

日本の医療費が増加を続けていることはニュースなどメディアで報道されているため、ご存じの方も多いでしょう。直近の統計がある2016年度では約42兆円ですが、2001年は約31兆円でしたから約10兆円増加しています。ここ15年間で年率約2%ずつ医療費が増えてきています。

医療費の増加を表すグラフ
医療費の増加を表すグラフ

このうち、多くのみなさんが病院や薬局で支払う3割の自己負担分や、保険料からの支出を除く残りの医療費は税金でまかなわれています。その額は2016年で約16兆円にのぼり、医療費全体の約4割を占めています。

医療費における国の負担は約11兆円(残りは地方負担分)、政府予算は全体で約100兆円ですから、政府予算の少なくない金額が医療に使用されていることになります。ちなみに国の予算で公共事業は約6兆円、教育関連は約5兆円ですので、医療費への支出よりだいぶ少ない金額だとわかります(2017年度)。

2.なぜ、 医療費は増加するのか?

経済成長を超えて医療費が増加すると、医療費の負担は重くなります。例えば、GDPに占める医療費の割合を見ても、おおむね増加を続けています(ただし、近年は景気が好調であるため、増加の割合は一定になっていると考えられます)。

要因ごとの医療費の伸び率
要因ごとの医療費の伸び率
対GDPあたりの国民医療費を示すグラフ
対GDPあたりの国民医療費を示すグラフ

医療費が増加している原因として考えられるのが高齢化です。一般的には高齢者ほど医療費を使用しますので、国民が高齢化すれば医療費も増加します。厚生労働省は医療費の伸びを「人口高齢化」「人口増加」「診療報酬の改定(=医療の価格が2年ごとに改定される影響)「その他」の4要因に分けて推計しています。

4つの要因で大きな影響を与えているのは人口高齢化ですが、「その他」も無視できません。「その他」の原因として正確なものは分からないのですが、医療技術の進歩によって、新しい治療法が開発・普及したための医療費の増加も大きいと考えられています。

3. 費用対効果の必要性

新しい治療法の開発・普及による医療費増加の要因には、医薬品や医療機器も含まれます。公的医療保険において医薬品や医療機器を用いる場合、みなさんが支払う自己負担を除いた部分には、税金や保険料といった公的なお金が含まれています。その意味でも、使用される医薬品や医療機器が、支払った金額に見合う効果を上げられているか=費用対効果のよいものであるかを考えることは、みなさんから集めた公的なお金を用いる上でも、重要なことであると考えています。

つけ加えれば、医薬品や医療機器の価格は、一定のルールに基づいて厚生労働省が決めています。厚生労働省はその状況下で、「医薬品や医療機器につけられた価格が適正なものであるか」を、費用対効果というものさしを当てることで科学的に検討することを進めています。

それにより、費用と効果が見合う、より効率的な医療を実現することは、現在の公的医療制度の「持続可能性」を確保するためにも大切なことだと考えています。

費用対効果の必要性